第17回「とぅばらーま」石垣島
「とぅばらーま」代表的な歌詞と大意
「とぅばらーま」石垣島
一、なかどーみちぃから ななけーらかよーんけ
なかすぃじぃかぬしゃーま そーだんぬならぬ
ニ、つぃきぃとぅてぃだとぅや ゆぬみちぃとぅーりょーる
とぅばらまくくるん ぴとぅみちぃありたぼり
三、ふたいらまーぎぃぬ ぴぃとぅいらならば
かーらぬみずぃぬ ぴぃきぃきしはらば
(大意)
一、仲道路を七回通ったのに
仲筋乙女子は相談ができぬ
ニ、月と太陽とは同じ道を通られる
あなたの心もひとつ道でありますように
三、二枚籬が一枚になったら
川の水が引き切って行ったら
【映像】石垣島の島人が唄う「とぅばらーま」収録2012年 石垣島
石垣島「とぅばらーま」 唄三線:金城弘美さん
「『とぅばらーま』はいまや八重山、沖縄、国内だけでなく、世界的に知られている唄ですよ。歌詞が英訳して出版されていますからね」
八重山歴史・芸能研究家の大田静男さんの第一声は、“いまや「とぅばらーま」は世界的な名歌である”という解説でした。
八重山方言で唄われる「とぅばらーま」が英訳されて世界へ羽ばたいていると知り、正直少し驚きました。
なぜなら、八重山の方言をヤマトゥグチ(日本語)に訳す場合でも、独特で絶妙微妙な表現を適切に訳すのは難しい。それをさらに英語に訳すとは! いったいどんな風に訳して表現しているのだろう。
不思議な感じもしますが、世界へ伝えたいほど「とぅばらーま」は素晴らしい唄なのだと理解できます。

名歌「とぅばらーま」は地域や世代によって、「とぅばるまー」、「とぅばりゃーま」、「とぅばらー」というように言い方が少し違うようですが、現在は「とぅばらーま」に統一しているそう。
「そうでないと表彰状を書くときに困るでしょう」とメガネの奥の目を細める静男さん。
唄のタイトル「とぅばらーま」の語源は、喜舎場永珣氏の「殿原」説と外間守善氏・宮良安彦氏の与那国方言の「親しく会う」説などがあげられますが、いまだ結論は出ていません。
唄の囃子に「トゥバラマ」という言葉が登場することがありますが、こちらは女性が愛しい男性を「トゥバラマ」と呼び、男性は愛しい女性を「カヌシャマ」と呼んだとのことです。
※「とぅばらーま」は今も昔も男女で唄うものだそうですが、今回はおひとりで独唱いただいていますので囃子はありません。
石垣市文化協会から『とぅばらーま歌集』が発行されるほど「とぅばらーま」には多くの歌詞があります。歌集にあるのは“広く知られた歌詞である”というのであって、元来即興で唄う「とぅばらーま」の歌詞は数えきれません。
「ふつう歌詞は一番、二番といいますが、石垣では一番、二番とは言いません。一句、二句といいます。
一番、二番は前後につながりがありますが、即興で唄う際には歌詞と歌詞の間につながりがない場合もありますからね」
とご説明くださるのは「とぅばらーま大会」の運営に携わる与那嶺定さん。

今回は「仲道節」とも言われる歌詞(一句)、そして「とぅばらーま大会」平成12年度チャンピオン最優秀賞受賞者・金城弘美さんに唄って頂いた歌詞(ニ句、三句)をご紹介致します。
むかしから基幹道路として往来のあった仲道。その一角、登野城、平得、真栄里の境界付近に一句の歌碑が建立されています。
一句は実在した人物・美女カナシへの叶わぬ恋に嘆き悲しむ内容です。
1794年、真栄里村の仲筋家に生まれた美しい娘・カナシ。年頃になったカナシのもとへ登野城の青年たちが一目会いたいと仲道を何度も何度も通います。

「むかしのひとたちにとって、数字の“7”は“たくさん”を意味していました。
7回通ったと唄っていますが、実際には7回ではなく、数えきれないくらいたくさん通ったという意味です。
“カラスなぜ鳴くの カラスは山に かわいい7つの子があるからよ”という歌も、7羽の子どもなのではなく、たくさんの子どもという意味だそうですよ」
と弘美さん。
何度も、何度も通ってはみても、憧れの美女カナシに会って相談(話を)することもできない。叶わぬ悲恋に嘆く若者たちの心の叫びなのです。

二句は「太陽と月が同じ道を通るように、あなたも私とともに同じひとつの気持ちでありますように」と恋人を想ういじらしい乙女心を唄っています。
三句にある「籬(まがき)」とは竹・柴などであらく編んでつくった垣のことで、2枚の垣が1枚になるとは、上下2枚の睫毛が合わさってひとつになること、つまり目を閉じて眠ることを意味します。「川の水が引き切って行く」とは川の水がすっかり引いてしまうように人通りがぱったりと途絶えてしまうこと。
「みんなが寝静まり、人通りも途絶えたら忍んで来て下さい」と遠回しに会いたいという想いを語っています。このように身近なものや自然現象に喩える言い回しには風情と時代を感じますね。
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