西表島・祖納「節祭」(2013年)

トゥシヌユー

節祭の「節」は年変わりを意味しています。トゥシヌユーの夜は、各家庭で去った一年の家族の無病息災を祝い、来る年の息災を祈ります。
各家庭にはザラングーとシチマシカッツァが準備され、ヤーカザシ(床の間にいらっしゃる家の守り神)に備えられています。
ザラングーとは悪いものを追い払うために撒く清められた珊瑚のことで、シチマシカッツァは「イリオモテシャミセンヅル」などの蔓植物のことです。

「各家庭ではトゥシヌユーをどのように過ごされますか?」と尋ねると、「夜7時過ぎに私のおうちに来て下さい」とおっしゃって下さった那根操さんのおうちへ伺いました。
陽が落ちて薄暗くなった祖納。場所によっては外灯がなく、まっくらな夜道を歩くためには懐中電灯が必要となります。というのも、毒蛇ハブに出くわすことがあるからです。

操さんのおうちを訪ねると、床の間の前にすでにザラングーとシチマシカッツァが準備されていました。
「家族で屋敷を守っている地の神さま、火の神さま、水の神さまに、健康祈願、五穀豊穣祈願を家族で祈ります。はい、みんな集まって」
操さんの声で、床の間の前にご家族が集まり姿勢を正して正座されました。
幼い頃からの習わしなのでしょう。小さなお孫さんたちも真剣な表情で神さまに手を合わせています。
一年間を振り返り、それぞれが想い思いに感謝と祈願をされているようでした。

トゥシヌユーの祈りが済むと
「シチマシカッツァは本来は家の中柱にやるものなんですが、うちにはないのでここに掲げます」
と青々とした新しいシチマシカッツァが床の間のそばの少し高い場所に掲げられました。
続いてバラバラバラと白い珊瑚片ザラングーを屋敷中に投げます。これは節分の豆まきのようなもので、悪いものを屋敷から追い払っています。おうちの中はもちろん、お庭にもザラングーはまかれ、最後に屋敷の門口にザラングーを境界線のように一列に並べます。それは追い出した悪霊をふたたび屋敷内に入れないための結界でした。

ザラングーをまき終えると、夜8時からスリズでウブシクミが始まります。「スリズ」とは公民館のことで、「ウブシクミ」とは総仕上げ、総予行演習のことです。棒、狂言、アンガー踊り等々、明日のユークイとまったく同じように演技して総点検を行います。

操さん宅で、カシキ(赤飯)をはじめとしたフルマイ(ご馳走)をいただいていると、スリズから銅鑼の音が聞こえてきました。操さんのお孫さんの荒木壮介くんが、「じぃちゃん、早く行こう!!」と何度もせっついているのが愛らしい。
小さな壮介くんにも節祭の流れがすっかり身についているのでした。

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