第3回「小浜節」小浜島

「小浜節」と島人のこころ

「宮良永祝が『小浜節』を改作したころは人頭税で苦しんでいた時代ですが、玉城朝薫をはじめ文化が盛んであった尚敬王の時代ですから、精神的には豊かであったかもしれません」とにこやかに語る黒島さんは、取材の最後にこう付け加えました。

「『小浜節』は島の原風景を、ありのままを唄っています。ぜひ『小浜節』を通して小浜島のこころを伝えて下さい」と。

今回取材に行く前に、沖縄本島在住の小浜島出身の方から、
「三線は弾けなくとも小浜の人の9割は『小浜節』を唄えますよ」
と教えていただきました。
また、
「島の人は全員『小浜節』を歌えるそうですよ」
と編集長からも伺っていました。

その話は本当だろうか? と確かめたくて、小浜島では会う方、会う方に、「『小浜節』は唄えますか?」と質問を投げてみました。
すると「唄えません」、「上手くはないけど、一応は唄えます」とみなさん一様にどことなく遠慮気味で、とても唄ってくださるような気配はありません。
小浜島に行けば「小浜節」をあちらこちらでたやすく聴くことができるのだろうという期待は意外や外れてしまいました。

不思議に思い、「島の人は全員『小浜節』を唄えると伺ってきたのですが、それは本当ですか?」と仲盛さんに尋ねてみたところ、
「はい。島のひとはたいてい唄えますよ。ただ、みんなと一緒にならば唄うのだけど、ひとりだと尻込みをするのですよ(笑)」
とのお答えは、島の人の受け答えの様子から本当なのだと納得できたのでした。
どうやら小浜島は格別に“はじかさー”(恥ずかしがり屋さん)の方が多いようです。

なかなか胸を張って「唄えます」とおっしゃる島人に出逢えず、少し焦りを覚えるなかで時間が流れて行きました。

帰る日になって、ついに堂々と「唄えます」と仰る島人に出逢うことができました。
キビ倒し(サトウキビの刈入れ)の“10時茶”の休憩中のことでありました。
周囲も「この方は先生だよー。上手だよー」というほど。
期待が高まります。

しかし、「小浜節」が得意だという島人の口から出た言葉は、
「実は昨日、島で不幸があってね。今日は告別式だから、唄えないさぁ・・・」

くしくも、1泊2日の取材で私が島に来た日にご不幸があったのでした。
きっと他の方も唄えるのだろうけど、ご不幸があったから控えていたのかもしれません。

とても楽しみにしていた「小浜節」を聞けないのは非常に残念でした。
しかし、島のひとのこころがよくあらわれる状況に遭遇できたと思います。
「ご不幸があったから唄えない」と島のひとが同じ島のひとを気遣い、思いやり、島の空気とともに同じ島のひとを大切にしているということがよく伝わってきましたから。

残念な気持ちを抑えながら、
「今度来たときはきっと唄ってくださいね」
と言うと、
「うん。今度は必ず唄うから、またおいでね」
と日焼けしたまっくるーな(まっ黒な)笑顔で返してくださいました。

旅先では何が起こるかわかりません。
でも、それはそのときのご縁。

小浜島を去るべく船着場を目指していると、集落のなかの一本向こう通りに喪服姿のひとたちが並んでいるのが見えました。
“あぁ、話していた方のご葬儀なんだなぁ・・・”
偶然、耳にしていた葬儀の近くを通ったようです。
集落を抜けると今度は亀甲墓に喪服姿のひとたちの姿がありました。

小さな島で偶然とは言え、なんとなく不思議な気持ちにもなりましたが、グソー(あの世)に旅立たれた島人のご冥福を祈りつつ、ふと、もし予想通りたやすく「小浜節」を聴けていたら、私の「小浜節」に対する想いは少し違っていたかもしれない、と思いました。
今回聴くことが叶わなかったから、次に聴けるときにはどんなに嬉しく、島人の唄声がこころに染み入ることでしょう。

次に小浜島に来たときはきっと「小浜節」が聴けますように、“「小浜節」を聴きに必ずまた来たい”と思いながら港へとバイクを走らせました。
風に揺れるウージ畑が、青い青い海が、「またおいで」と手招いているように見えました。

小浜島、また来るからね。

つぎにあなたが小浜島を訪れるときは島風とともに、島人がこれからもずっと大切にしていきたいと思っている「小浜節」を思い出して頂けると幸いです。

そして、もし小浜島以外のどこかで「小浜節」を聴く機会に恵まれ、「ダンジュ チョーマリル」と唄い始める方であれば、「あなたは小浜島の方ですね」と話し掛けてみてください。
きっと「どうしてわかったの?」と笑顔で返してくれるはずです。

  だんちよ てゆまりる 小浜てる 島や

「小浜節」を通して小浜島のこころがあなたの胸にも届きますように。

取材協力・参考文献

取材協力(2011年3月)

黒島精耕さん、仲盛長儀さん、大嵩直二郎さん、慶田盛英子さん、真栄里悟さん、島袋幸雄さん、民宿だいく屋、レンタバイク結

小浜島でお会いしたみなさま、まことにありがとうございました。
いっぺーにふぇーでーびたん。

<主な参考文献>
『島うた紀行 第二集』仲宗根幸市
『「しまうた」流れ』仲宗根幸市
『沖縄の歌100選』ラジオ沖縄
『八重山歌謡集』仲宗根長一

2011年3月 取材・撮影・執筆:安積美加

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