子どものころ、祖母のおうちの玄関から門扉までずーっとてぃんさぐぬ花が咲いていました。
爪を染めたり、ティッシュを染めたり、「フルーツジュース」と言っておままごとをして遊びました。
色は薄いピンク。種をはじいて遊んだりもしました。
20代のころ大阪にいたのですが、沖縄を離れてみて、はじめて沖縄のよさに気付きました。
若いころは都会にステータスがあると思っていたんですよね。
三線の音色が聞こえてくると沖縄が懐かしく、帰りたくなりましたね。
仕事が休みのときにはわざわざ三線の音が聞こえる町までよく散歩に出掛けました。
結婚して子どもが生まれると、自然と出てくる子守唄は、自分が子どもの頃に歌ってもらっていた歌なんです。
「耳ちりぼーじゃ」、「てぃんさぐぬ花」、「ちんぬくじゅーしー」などをよく唄ってもらいました。
「耳ちりぼーじゃ」は意味がわからないのに怖くて印象に残っているそうで、
「子どもを脅して寝かしつけようとするなんてひどい親だ」と子どもに言われました(笑)
※「耳ちりぼーじゃ」は“耳切り坊主”が出てきて耳を切られるからいい子でいなさい、早く寝なさいという子守唄。
「てぃんさぐぬ花」は、メロディーとテンポが子守唄にぴったりだと思います。
おばあちゃんが私の肩に手をまわして、トン、トンと私の胸に手をあててよく唄ってくれていました。
唄の意味は聞けば教えてくれましたが、「いまはわからなくても大人になったらわかるからね」と言っていました。
大人になって忙しくなったときに、祖母の言っていることがようやく理解できた気がします。
「てぃんさぐぬ花」は口伝えでつたわっている唄。
歌い継がれている唄はメロディーもテンポもしっくりくる、こころが落ち着く唄だと思います。
昔はモノはなかったけれど、こころは豊かだった。
物質的に豊かになって、便利になって、忙しくなって、祖父母と孫の交流から世代の違いで学ぶところや、親子の交流や、子どもに大切なものを伝える時間を置き忘れてきたような気がします。
今回インタビューを受けるにあたり、子どもに「てぃんさぐぬ花」を唄っていたこと覚えている? と聞いてみたら、覚えていると言ってくれました。
ひさびさに娘と話し合う時間をもて、娘と同じ唄について語り合えたこと、私自身いろいろと考える時間をもてたことに感謝しています。
今回のインタビューをきっかけに、子どもとの交流の時間をもっと大切にしたいと思いました。
インタビューに答えてくださった素敵なウチナンチューの女性、伊佐尚子さんは今回、知人を通じてご紹介していただきました。つまり、「てぃんさぐぬ花」がつないだご縁です。
「今回の取材のご縁は、“仕事に忙しくしすぎているんじゃないの? もっと子どもたちと交流する時間を大切にしなさいね”
という亡くなった祖母の声かもしれません」
お仕事中のお忙しいところ、丁寧にお話ししてくださった伊佐さんの“大好きだったおばあちゃんからのメッセージ”というお考えには、感動で胸が熱くなりました。

島風の記憶と希望 
