世代を越えて伝え続ける大切な肝心
「江戸は夏、大川堤にはツマクレナイをつみ遊ぶ娘たちの姿があった」
柴田錬三郎の『眠狂四郎無頼控』の一文に「江戸の娘たちもツマクレナイ(てぃんさぐ)で爪を染めて遊んだ」とある、つまり江戸にも沖縄と同じ習慣があったのだと綴っている項が、民謡に詳しい上原直彦さんの著書『語やびら島うた』にあります。
敬愛する民俗学者・照屋林助大兄の説によれば、「てぃんさぐ」の「てぃ」は手、つまり指、爪を意味し、「さぐ」は歌唱の場合の「サグ入り」の「サグ」をさす。したがって「てぃんさぐぬ花」とは「手(爪)にサグ(綾)を入れる花」である。
琉球、江戸、時代と土地を超えて子どもたちがてぃんさぐぬ花を爪に染めて遊んでいたのですね。
古くから馴染みのあるてぃんさぐぬ花ですが、「最近、てぃんさぐぬ花を見ましたか?」と尋ねるとほとんどの方が「むかしはいっぱい咲いていたけど、そう言えば最近は見ないねぇ」とおっしゃいました。
「いつもそこら辺に咲いていると思っていたから、あまりにも身近すぎて気にもとめなかった」という方が大半です。
唄は生き続けていても、てぃんさぐぬ花自体の存在が忘れられていっているようで、なんだか少し淋しい気持ちになっていたところ、次のような素敵なお話を伺うことができました。
島風の記憶と希望 
